◇ ◇ ◇
ざわざわと騒がしい教室。
小さな力でも大きな音の鳴ってしまう、教室の扉。それを開けても、誰も気には留めない。
楽しげな生徒たちの間を縫って、自分の席へとたどり着く。椅子を引いて座るなり、かばんを机の横にかけもせず、教科書も入っていないペラペラのそれに顔を埋めた。
朝は、俺のいちばん苦手とする時間帯だ。
目を閉じてみるも、余計に周りの音が大きく聞こえて落ち着かない。
小さく舌打ちして、俺はかばんの中からスマホとイヤホンを取り出す。通学で愛用している無料で音楽が聞けるアプリ。それを開いて、イヤホンを耳に突っ込んだ。
周囲の声が聞こえないくらいまでに音量を上げて、再びかばんに突っ伏した。
...別に、友達がいないわけじゃない。
ただ、自分から進んで関わりにいこうとするのが面倒くさいだけだ。
何をするのも、本気にはなれなくて。
俺の世界を例えるなら、無彩色ばかりの、白黒の世界だ。色味がなくて、ただ過ぎていく時間をぼんやり眺めたみたいな。
そんな冷め切った毎日が、
俺、桐山泰生の日常である。