「ふう。ごちそうさまでした!」
鈴森先輩は俺の目の前で、パン、と音を立てて手を合わせ、深々と頭を下げた。あれだけ量の多かった料理を、彼女はひとりで完食してしまった。細くて小さなその体のどこに入っていくのだろうと思う。
「そろそろ行こっか」
「そうですね」
お会計を済まして、外に出る。涼しかったのが一気に夏の温度に変わって、暑さがさらに暑く感じる。
来た道を戻るのは、少し景色が違って見えた。
「なかなかいいお店だったね」
「ですね。この辺りよく来るんですか?」
「んーん、全然」
「え、じゃあどうやってあの店見つけたんですか?」
ただ、不思議に思って、そう質問を投げ掛けた。彼女にとっても、ただの何の変鉄もない、この流れじゃ普通の質問だっただろう。でも、その答えが、俺を平常にはいさせてくれないもので。
「夏休み前にねー、慶哉とこの商店街来たんだ」