間もなく列は動き出し、五組の生徒達やその他新一年生は体育館へ向かう。

 歩いている間、首を列から出して前にいる千尋を見てみたが、

「昨日のテレビ見たんだぁ~、あれ面白かったよね~」

 もう他の学校から来た人と仲良くなっていた。さすがは千尋。

 すごいなぁと感心している間にも、列は進み体育館へと近づいていく。

 一階に下り、体育館と校舎を繋ぐ外通路を進むと、もうそこは体育館の入口だった。

 五組の列は、そこでピタリと止まる。私はまだ中に入れていないので、少し寒い。

 風が吹くとさらに寒さを感じ、私は両腕で体を抱えた。そのまま体をこすって、少しでも寒さを紛らわそうとする。

「はい、皆さんよく来ましたね」

 寒い寒いと体をこすっていると、列の先頭の方から声が聞こえた。まだ若めの、女の人の声だ。

 誰だろうと思い顔を横に出して確認すると、列の先頭には、一人の女の人が立っていた。

 声の印象と同じく、まだ若い。長めの髪を、後ろで一つにまとめている。

 五組の担任だろうか。そうでなくとも、学校の先生であるのは確かだろう。

 私は女の人を見ながらそんなことを考え、女の人が出す指示に従って館内へと足を踏み入れた。

 そこには多くの保護者の人達と、先輩方が集まり、私達を拍手で迎えてくれた。

 感動で胸が熱くなる。こんなに多くの人達が、私達を迎えてくれるなんて、嬉しかった。

 組ごとに一列になり、用意されていたイスに座り、拍手が止んだところでついに式が始められた。

 とはいっても私達はただ座っていただけで、何もしなかったのだけど……。

 そんなに緊張することもなかったなぁと、校長先生の話を聞きながら、そんなことを思っていた。

 やがて時は過ぎ、式は終わりを迎える。新一年生一向はまたしても拍手に包まれながら、体育館を出て行くのだった。

 教室に戻る廊下は、行きよりざわついているような気がした。実際そうなのだろう。

 やはりみんな少しは緊張していたようで、行きは黙りこんでいたようだ。千尋は、全然そんな感じではなかったけれど。

 それに比べて帰りは緊張が解けているのか、自然と口も開くらしい。

 私は前後に同じ学校出身の人がいなかったので、誰とも話さずに黙って教室へと帰った。

 こんなんで、新しい友達……できるのかな?