「わはは、ごめんごめん」

 笑いながらも謝ると、千尋はすぐに「よし」と許してくれた。こういうサバサバしたところが、千尋のいいところだ。

 私と千尋は並んで歩き、五組の教室へと入る。すると、同級生達の姿があった。

 もう半数くらい来ているだろうか……。席についている人、友達と喋っている人、ボーッと辺りを見回している人、色んな人がいる。

 誰がどういう人かなんて、見たくらいじゃ分からない。いい出会い、悪い出会い、きっと様々な出会いがあるのだろう。

 ふと黒板へと目をやると、そこには大きな文字でメッセージが書かれていた。


『新入生の皆さん、入学おめでとうございます。これから皆さんは、東部中学校の生徒です。そして、この一年五組の生徒でもあります。みんな仲良く、楽しいクラスになるように努めていきましょうね』


 残念ながら名前などがないので、誰が書いたものかは分からない。多分、この五組を担任してくれる先生だとは思うけれど……。

 そう思ったのは千尋も同じのようで、「これ誰が書いたんだろう」と首を傾げている。

「担任の先生じゃないの?」

 私が言うと、「そっかぁー」と間の抜けた返事をし、千尋は自分の席を探し始めた。

 私と千尋は、名前の順では離れている。なので席も離れてしまうだろう。残念だけど、仕方がない。

 しばらく机を順に確認していた千尋だったが、自分の名前を見つけたようで、イスを引くとそこに腰を下ろした。

 そうだね、もうそろそろ席についていた方が良さそうだし……。

 私も自分の名前を探し、やはり千尋とは離れた場所にある自分の机を見つけ、イスに座る。

 やることが何もないので黙ってボーッとしていると、放送が流れているのが聞こえた。

『新入生の皆さん、廊下に並んで、体育館へ向かいましょう』

 ついに式が始まるのか……。忘れていた緊張が戻ってきて、心臓が音をたてる。

 放送を聞いた五組の生徒達は次々と廊下へ向かい、自然と名前の順で整列を始める。

 私も女子の列へと混ざり、前の人の名札と顔を確認する。彼女は、私の前に座っていた人で間違いなさそうだった。