「良かった、千尋と同じクラスなら、何だか安心」

「あたしもそれ思ったー! 蘭と一緒で良かったーって」

 私が思ったことを口にすると、千尋も頷きながらそんなことを言ってくれた。

 千尋なら、新しい友達もすぐにできるだろうし、私なんかと同じクラスでなくてもやっていけるだろう。なのに、『一緒で良かった』なんて言ってもらえて嬉しい。

 私が千尋と喋っている間にも、クラスを知った同学年の生徒達が、次々と昇降口内へと入っていく。

 私達もそろそろ行かないと、時間だろう。

「じゃあ、また帰りにでも話そっか。そろそろ行こう」

「オッケー!」

 千尋の元気な返事を聞いて、私は昇降口内へと入った。千尋も私に続く。

 五組の靴入れを探して、自分の名前が書いてある場所に、学校指定の白い靴を入れた。

 これから通学時は、この白い靴を履くことになっている。大体どの中学校も、外靴は白いものを履くことになっているだろう。

 一年生の教室は四階にあり、階段を上らなければならない。

「蘭~、疲れたよ~」

 先ほどまでニコニコしていた千尋も、これには参ったようだった。私も息があがりそうなのが分かる。

 二年生になれば教室が三階になるのだが……それは仕方のないことだ。

 小学校と違い、中学校は年上の生徒、先輩方を大事にしなくてはならない。そのことは、だいぶ前から知っていた。

 なので、先輩である二年生や三年生が下の階に教室をもつことは当たり前なのだが――、

「うん……疲れるね……」

 やはり疲れるため、そんな言葉が漏れてしまう。言って楽になるわけではないのだけれど。

 やっとの思いで四階まで上り切った時には、私も千尋もクタクタになっていた。その内慣れるだろうけど、それまでが大変だ。

 次に目指すは五組の教室。廊下の端の方へと目をやると、端から二つ目の教室がそれだった。教室の前の扉の上に、『五組』と書かれたプレートが付けられている。

「千尋、あそこみたいだよ」

 私がプレートを指差しながら言うと、

「おお……そだね……」

 まるでゾンビのような腰を曲げた格好で、気だるげな表情を浮かべながら、千尋がそう返事を返してきた。

 その格好と表情がおかしくて、私はつい笑ってしまう。すると千尋はムッとしながら、

「なんだよぉ~、疲れてるんだよ~」

 ジト目で私のことを半ば睨むように見つめてきた。