……なんて、蒼くんの親みたいなことを考えながら歩いていると、図書館は目前に迫っていた。

 この辺りでは大きめの図書館に、私と蒼くんは揃って足を踏み入れる。

 返却用カウンターに本とカードを提出し、少し待つ。やがてカードが返され、本は返却されたことになった。

 お礼を言ってカードを受け取り、バッグの中にしまう。そこで、蒼くんがいないことに気付いた。

「あれ? 蒼くん?」

 館内なので大声が出せないため、小声で蒼くんを呼んでみる。しかし返事はない。

 もしかしたら、面白そうな本を探しに行ったのかもしれない。それなら、無理に探して一緒に行動しなくてもいっか。

 私は私で本を探すことにして、私はいつも見に行く文庫コーナーへと向かった。

 ここの図書館には、文庫本も豊富に揃っており、中学生でも楽しめる本がいっぱいある。

 色とりどりの背表紙の中から、気になったものを取り出し、表紙とあらすじに目を通す。私はこうして、いつも借りる本を決めている。

 別に今日は借りに来たわけではないのだが、せっかく来たのだしのんびりしていこう。気になった本があれば、借りればいいし。

 棚を端から順にゆっくりと見て行き、気になったものがあれば手に取る。そんなことを繰り返しているうちに、時間は過ぎていた。


 ふと時間が気になり、たまたま近くにあった時計に目をやると、もう二時間もの時間が過ぎていた。

 さすがに帰った方がいいだろう。お母さんも心配するだろうし。

 それは私だけではなく蒼くんにも言えることで、私は早足で館内を歩き回り、蒼くんの姿を探した。

 しかし、数分探しても蒼くんの姿は見当たらない。

「蒼くん、蒼くん」

 他のお客さんの迷惑にならないように気をつけながら、小声で蒼くんの名を呼んでみるも、返事はなし。

 一体どこに行ってしまったのだろう。やはりあの時に探しておくべきだっただろうか……。

 必死になってあっちを見たりこっちを見たりしていると、

「……あ」

 やっとのことで、蒼くんの姿を発見した。蒼くんは本棚の脇に設置されたイスに座り、何やら真剣に本を読んでいる。

 何を読んでいるのだろう……。気にはなったけれど、ここからでは蒼くんの背中しか見えない。

 近くの本棚に付いているプレートを見てみると、そこには『心理学』の文字があった。