「ここ‥」
櫂に連れられて来たのはかなり造りが古くさい洋食屋さん。
パッと見はちょっと大丈夫って感じだけど‥。
「外観悪いけど、うまいから」
あたしの心見透かすようにそう言って、店のドアを開ける櫂。
「いらっしゃい!あれっ?今日は勇ちゃんはっていうか‥そちらのお嬢さんは彼女かい?」
「違うよ、おじさん。まぁ‥大学のダチのような?」
「そうかい!じゃあこっちに座って待ってて」
ニッコリ笑顔の優しい雰囲気の白ヒゲのおじさんが迎えてくれた。
櫂はここの常連さんなのかな?
「うまいよ、ここのオムライス」
「えっ‥?」
「好きって言ってたから。まぁ、レバ刺しはないけどな」
「だからここに連れて来てくれたの?」
「ここしか店知らないしさ」
メニューを見ながら言う櫂。
あたしの大好物‥っていうかあのお祭りの時、あたしがベラベラ喋ってたのちゃんと聞いてたの?
しかも覚えててくれて。
適当に頷いてたから、てっきりウザがられてると思ってたのに。
なんか本当に、櫂って地味に優しいんだよなー。
ちょっと胸がキュンとしちゃうよ。