「美菜・・・俺さ、またサッカー始めたんだ。


天国で健哉がなんて言ってるかわからないけど、今はアイツのためにサッカーをしてる

プロになる気もないし、上を目指すつもりもない

俺がサッカーをやり続ける事

それが唯一、俺にできる償いだと思うから…」



櫂は美菜ちゃんを立ち上がらせて浴衣の汚れを叩きながらそう言った。


普段無口な櫂が喋ってる…。



けど


美菜ちゃんの返事はなかった。


櫂もそれ以上何も言わなかった。



「友達は待ち合わせした近くのコンビニで待ってるらしい

俺らは帰るから


またな…」



櫂はあたしの腕を掴んで、一度も振り返らずに歩き出した。



“またな…”


そう言ってたけど

もう次は二度とないような言い方だった。



握る手が少し痛い。

今の櫂の気持ちが何だか伝わってくるみたいに…。


ギュッと歯を食いしばる櫂の横顔を、あたしは気になってチラチラ見ていた。