「追わなくていいの?」


「もういいって」


「どうして追わないの!!よくわかんないけど…言いたい事あるんでしょ!!」


櫂を置いて、走ってどこかへ行ってしまった彼女を、あたしは一生懸命捜した。

余計なお節介だけど

櫂にも彼女にもこのままじゃ絶対良くない。


言いたい事を素直に伝えられないつらさは、あたしだって知ってるから…。


神殿の近くのベンチに座って蹲る彼女を発見。

せっかく来ていた彼女の白い浴衣はドロドロで台無しだった。



「あのぉ…大丈夫ですか?」


あたしがそっと声をかけると、ゆっくりと顔を上げて涙を拭いた。


涙は女の武器?

そうじゃないけど、近くで見ると本当に可愛い顔。



「あなたはクロの・・・」

「クロ?」

「あっ、櫂の彼女の」

「違います、ただの友達ですよ、森山未菜っていいます」

「あたしは西山美菜です。同じ名前ですね」


無理に作り笑いを浮かべる美奈ちゃん。

声も可愛くて、性格もすごく良さそう。


黒崎櫂だから“クロ”って呼ばれてるんだ。

ちょっと笑える…。


でも櫂はこの子に何をしたんだろう?