「はいよー、ハンバーグ定食。
おじさんもいつか櫂の彼女見てみたいな、店に連れて来たらサービスしてやるよ」
おじさんは笑顔でそう言って俺の机の前に皿を置いた。
「櫂はまだあの事が忘れらんないんだってさ、健哉の事も、美菜の事も…」
子供がお母さんに告げ口するみたいに言う勇馬。
「バーカ、無理に嫌な事を忘れようとしなくたっていんだよ。
そんなもんは時間が解決する。
櫂はよく運命って言うけどな、そんな出会いって実はたくさんあるんだよ、自分が気づかないだけでな。
いつか櫂だってな、過去を忘れるぐらいのいい恋を自然とするんだよ!!」
俺の方を向いてウィンクをして、おじさんはまた厨房に戻っていった。
すべてを見透かしたような言葉がちょっと怖い。
なんだか妙な説得力もある。
俺もいつか自然と恋をするんだろうか?