「至流婆君の歌を聞いて、私は元気を貰いました。だから私も自分自身を変えられるなら、私みたいな人を元気づけなれるなら」

心愛の瞳は本気だった。

私はその瞳を見たとき心臓が大きく高鳴った。

「私は、そう思ってこのオーディションを受けたんです」

「そっか、私なんかより心愛ちゃんの方が素敵な願いもってるじゃん」

「そ、そんなことは決してーー」

「蘭」

少し離れたところで、里音が私の名前を呼んで手招きしていた。

「そろそろだよ!」

「うん、分かった。それじゃぁね心愛ちゃん」

「はい、色々とありがとうございました」

心愛は深々と私に頭を下げた。

「どういたしまして」

心愛の元を離れて、私は里音のところに戻った。

「見つけた」

「あっ!優ちゃん」

「探したぞ、まったく」

「ご、ごめんなさい。眼鏡落としちゃって」

「でもあったんでしょ?」

「うん、拾ってくれた人が居たの」

「ふーん……」

『次の人南雲優(なぐもゆう)さんお願いします』

「あっ、優ちゃん呼ばれたよ」

「……めんどくさ」

南雲優と呼ばれた人は、溜め息を付きながら、部屋の中へと入って行った。