「かなめ」

正宗は先輩と向き合った。

「色々とありがとね」

「別に、俺は何もしてないよ」

「そんな事ないよ、正宗」

「……っ」

やっぱり、正宗はかなめ先輩のことが好きだったんだ。

「蘭ちゃんもありがとね」

「え!そ、そんな先輩にお礼を言われるようなことは何もしてませんよ」

「ううん」

先輩は左右に首を振ると、私の手を握って言った。

「蘭ちゃんに話聞いてもらって良かったよ。蘭ちゃんに話聞いてもらっていなかったら、私は涼介と会うのを拒んでいたかもしれない」

「わ、私が話を聞いていなくても、先輩は涼介さんと会っていたと思います」

だって、好きな人と会いたくない人なんて居ないと思う。

私は恋愛とかまだしたことないからよく分かんないけど、私は大好きな人とは、毎日会いたいと思うから。

「涼介さん、また先輩を悲しませたら、私が許しませんからね」

「うん、ありがとね蘭ちゃん」

やっぱり、涼介さんの笑顔は眩しい。

先輩は涼介さんを見て笑っていた。

先輩の一番の幸せは、涼介さんのそばに居ることかもしれないと、私はこの時そう思った。