「おい、こっち来いよ」

「ち、ちょっとっ!」

正宗に手首を握られ、私たちは奥の席へと向かう。

「ちょっと!正宗いいの?二人きりにして」

「良いんだよ」

「でも……」

先輩の事が心配だ。

「蘭」

「っ!」

正宗に名前を呼ばれて、胸が高鳴った。

「今は二人きりの方が良いんだ、その方が色々と話せる」

私に優しく微笑んで言ってくれる姿に、私の目は釘付けになった。

それぞれ席についた私たちだったけど、店の中の空気は重たくて、時計の針の音だけが響くだけだった。

涼介さんたちの方も話はしているみたいだけど、会話は長く続かないみたいだった。

「ねぇ正宗、本当にこれで良かったの?」

「だから、さっきも言ったとおり、これで良いんだよ。あの二人は数カ月ぶりに会ったから、何を話していいのか分からないだけなんだよ」

「そういうものなのかな?」

軽く溜め息をつき、私はココアの入ったカップを口へ運ぶ。