なんで、?こんな時に

「だからこそ、追いかけ続けたい」

先輩の姿は、とても眩しかった。

そっか、私はやる前から自分に無理だと言い聞かせてしまっていた。

それじゃ駄目なんだ。

もっと前を向かなくちゃっ!

「先輩、私やってみます」

「うん、蘭ちゃんはそう言うと思った」

「先輩は、何でもお見通しなんですね」

「よく言われるよ」

先輩と居ると、自分に素直になれる。

今日先輩と会ったのは、偶然じゃなかったのかもしれない。

「あっ、電話きてる。そういえば、朝からずっと電源切ったままだったけ?」

スマホを指でいじっている先輩は、着信履歴を見た苦笑を私に見せた。

「先輩?」

「ううん、何でもないよ」

苦笑を浮かべる先輩だけど、とても嬉しそうに見えた。

その時、先輩の携帯が勢い良くバイブレーションした。

「あっ、あの子からだ」

「えっ?」

「ちょっと、ごめんね」

先輩は電話に出ると、少し私から離れた。

「もしもし、正宗?」

正宗?!

先輩、正宗って言ったような?

気のせいかな?