「ま、正宗?!」

ドアの近くに、正宗が黒のサングラスをかけながらフェアーリに寄りかかっていた。

「あっ、やっと来たかよ。遅いんだよ」

「わ、悪かったね。でも、何で正宗がこんなところに居るのよ?」

「はっ?」

「もしかして、迎えに来てくれたの?」

そう聞くと、正宗は私の所へと近づいてきた。

「か、顔近いよ……」

正宗の顔が近くなって、頬が熱くなるのを感じたけど、それはすぐに冷めることになった。

「仕方ねぇだろ、お前目的地分かんないんだから」

「そ、それで迎えに来たんだ」

「本当は来たくなかったよ、面倒くさいし、お前に会いたくなかったし」

胸が痛んだ。

何でそんな事平気で言うのかな?

「で、でも何で私の家分かったのよ?!」

「はぁ?お前オーディション受ける前に、紙に名前と住所と電話番号書いただろ」

「あっ!」

正宗の言うとおり、確かそんな事書いた。

「ほら、乗れよ早く」

「でも、まだ時間あるよ?」

「えっ?」

正宗は、腕時計を見て舌打ちした。