「どうしたんすか?いきなりボーッとして」

「べ、別に何でもねーよ」

いや逆だ。

俺は今蘭の答えを聞いて、嬉しい気持ちと、イライラする気持ちが、俺の中でぐるぐると回っている。

嬉しい気持ちは、俺達の歌に込められた気持ちや想いを知った存在が、初めて見つかったこと。

そして、イライラしている気持ちは。

「指名確定か……」

誰も指名をしないつもりでいたが、俺の中で指名する奴が出てしまった。

「星美夜蘭か」

あいつに出会ってから、俺はいつもの俺じゃなくなっている感じがしてならない。

それに、あいつかなめと違うところが沢山ある。

かなめに抱いた事のない気持ちまで出て来やがる。

「なんか、不思議なやつだなあい」

その時、俺の顔は軽く綻んでいた。

そんな俺を見た涼介は、微笑んだ事に俺は気づかなかった。