「財津さん!どうしたんですか?」

突然の財津の現れに慌ててコーヒーをこぼしそうになる。

「いや、休みだから来てみたんだけど。当麻いないみたいだね。優衣ちゃんって子も。」

財津は当麻の席に座ってオフィスを見回した。

社員が忙しそうに働いている。

こんな中で眠れる当麻がすごい。

「はい。ちょっとある事件の調査で……」

「……でも珍しいな。当麻ってあれ以来人と関わってないかと思ったのに」

その瞬間、日向の顔が曇る。

「お兄ちゃんは優衣ちゃんといることで、前に進もうとしてる。……私はダメだな。全然前に進めない」

日向の瞳に涙が浮かぶ。

財津が声をかけようとした、そのとき。

日向の携帯電話が着信した。

着信画面には「お兄ちゃん」と表示されている。