「武田君、部活は?」




「あー、今日は遅れていくって伝えた」



「そっか。・・・日誌係、矢田さんだけど一番に出てっちゃってたよ」


「矢田、6時限目の授業中書いてた。移動だからって油断しすぎだよな」


いつもと変わらない武田君の表情。人懐っこくて、いっつも笑顔。



「暑いね」


「あちーなー」


窓からカーテンをなびかせて入ってくる蒸し暑い風。


グラウンドから聞こえる掛け声。


外の音がやけに聞こえるのは、教室内の2人の声がなくなったから。



「――なあ」




沈黙を破ったのは、武田君の真剣な声だった。