人影の正体は男だった。



40代ぐらいの、スーツ姿。


オールバックにしている髪の毛はどこか清潔感がある。



何かを探すようにあたりを見回し・・・そして通り過ぎていく。



・・・よかった、通り過ぎた。




――その瞬間、引き寄せた肩からものすごい震えが伝わった。



「――っ!!」



風優?




「風優、どうした?」



風優は答えず、何かに耐えるようにうずくまる。



頭を押さえている。眼には涙がたまっていた。



・・・どうしたんだ、




「風優、大丈夫、怖くない」




風優からは返事がなかった。



肩から伝わる震えが




消えた。






そして、俺の体に少し重みが加わった。





「・・・・風優!!!!!!!!」





風優が、倒れた重みだった。