いつものように、河川敷でくつろぐ慧を見つける。



皆、気づいてるけど怖いから話しかけられないんだ。


それに気づいたのは1週間前。


そして、帰り道で頻繁に話しかけるようになったのもまたこの頃からだった。



「慧ー!」


慧を見つけ、少しドキッとする。



夕日に照らされる横顔。


何を考えているかわからないけれど、確実に強い光を放つ翡翠の瞳。



慧は私の声を聴いてこっちを振り向いた。



「風優」



そうして、やわらかく微笑むんだ。



そのたびに音を立てて弾む心臓は私だけの秘密。





「一緒に帰ろう」


慧が起き上がり、優雅な動作で自身についた草を払う。


流れるようなしぐさ。




「うん。言ってくれると思ってたよ」


だから待ってた。という彼。



「待っててくれたの?」


「だって風優、準備遅いから・・・」


「ご、ごめんなさい」


「いや、構わないよ。こうして河川敷できれいな風景が見れるしね」



それに。


と彼は付け足して、しゃべるのをやめた。


進む足が、止まった。


花が咲いたようなきれいな笑み。その奥にどこか無邪気さを隠して






君はいったんだ




「夕日に照らされるきれいな風優が見れるから」