「多田くんのことを1発、殴っちゃったんだよね」
「えっ」
でも、過保護なお兄ちゃんならやりかねないか……。
葵ちゃんのこと大好きだもんね。
「でも多田くん、お兄ちゃんに私が好きなんだって何回も言ってたの」
「多田くん……」
多田くんの葵ちゃんへの愛の大きさにじーんときた。
葵ちゃんのこと大好きなんだって伝わってくる。
「それでもお兄ちゃんは『あんなチャラチャラしたヤツは信用できない』とか、『ただのストーカー』とか、多田くんをいい風には思ってないみたいでさ。どうしたらいいのか、わかんないんだよね……」
はぁ……とため息をつく葵ちゃん。
「多田くん、そんなに悪い人じゃないんだけどなぁ」
葵ちゃんの言葉を聞いて、少し前の自分を思い出した。
拓磨くんの優しさを知ってから私は、拓磨くんを冷たい目で見る人たちに対して、そう思っていたから……。
「葵ちゃんがちゃんとお兄ちゃんたちに……言えばいいんじゃないかな?」
「え?」
「多田くんは本当はすごくいい人なんだってことを……話せばいいんじゃない?」
人は人を見た目で判断しがちだ。
でも、その人の本当の性格は実際に関わってみないとわからないもの。