「葵ちゃんって……多田くんのこと、好きなんだよね?」



近くに多田くんがいないことを確認して、小声で聞く。



「えっ」



私の問いかけに葵ちゃんは顔を赤くした。



「……まぁ、別にキライではないけど……」



葵ちゃんは俯いて、なにかを考え込む。



「どうかしたの?」



葵ちゃんのこんなに寂しそうな顔、初めて見たかもしれない。
なにか悩みでもあるのかな?



「前に、美憂が居残り掃除させられたとき、多田くんと放課後に少し遊んだじゃん?」



そういえばそんなこともあったな。
葵ちゃんが私を誘ってきたけど、私がムリだから、多田くんが葵ちゃんと……って。



「う、うん」



「その帰りに、多田くんが家まで送ってくれたんだけど、家にちょうど着いたときにお兄ちゃんが家から出てきて」



「あ……」



あの過保護なお兄ちゃんが出てきたってことはもしかして……。