「あ、そういえば」



多田くんが思い出したように言った。
そして、耳打ちで、



「もう、拓磨とはちゅーしたの?」




と、聞いてきた。



ちゅーという単語を聞いた瞬間、私の全身は熱くなる。
ドキドキしながら首を振ると、多田くんはビックリした表情をした。



「へぇ~~……あの拓磨がまだガマンしてるのか。すげぇな……美憂ちゃん、愛されてるんだな」



「え?ガマンって……なに?」



そういえば結構前にも、拓磨くんをあんまりガマンさせちゃダメだって言ってたよね?
私……拓磨くんになにかガマンさせてるのかな?



「はは、それは俺からは言えないかな~?だから、拓磨に聞いてみな?」



多田くんは楽しそうに笑いながら言った。



……よし、今度タイミングがあったら聞いてみよう。
私だけ拓磨くんに甘えて、拓磨くんにガマンをさせるなんてかわいそうだ。
だからちゃんと拓磨くんのワガママを聞いてあげなきゃね。



「拓磨くんが私に対してガマンしてることがあるんだって教えてくれて、ありがとう!」



「いえいえ」




そのときの多田くんの笑顔は少し意味深……だった気がした。