そして私の目の前をものすごい速さでなにかが通り過ぎ、気がつけば葵ちゃんに多田くんが抱き付いていた。
「おはよ、愛しの俺の葵ちゃんっ」
「……いつから多田くんのになったの」
「ずーっと前からだよ!」
「…………」
葵ちゃんと多田くんの温度差がすごい。
というか、ほぼ毎日この光景を見ている気がする。
「あ!そういえば、拓磨の母親のこと聞いた!?」
多田くんが私に今さら気がついたように言った。
「うん、聞いたよ」
「ほんとよかった~……でもまさか、あんな真実が隠されていたなんてな。ビックリだよ」
「私もビックリしたよ」
「このまま、拓磨にもずっと幸せが続けばいいな」
「うんっ」
拓磨くんの幸せは私の幸せ。
好きな人の幸せを願うのは、当たり前のことだ。