美憂と一緒に過ごすうちに、予想通りどんどん好きになっていって。
もう好奇心とかそんなんじゃなくて、美憂と一緒にいたいって思うようになっていたんだ。


人をもう一度信用しよう、そう思えるようになっていた。



「拓磨くんって過去になにかあったの……?」



だから……怖かった。
美憂に自分の過去を話すことが。
自分の残酷な過去を聞いたら美憂が離れていきそうで、怖かった。



美憂がそんなことで離れていくようなヤツじゃないってわかってるけど、それでもやっぱり怖くて言えなかった。



「拓磨くんのその寂しそうな表情……見てられないよ」



美憂の心配そうな表情に胸が痛くなった。



「私は、どんな些細なことでも拓磨くんのことを知りたい!私になにかできることがあるなら、どんなに小さなことでもしてあげたい!だから……っ」



なのに、臆病な俺は優しい美憂を……突き放したんだ。
自分勝手で最低な自分にどうしようもなく腹が立って、どうしていいのかわからなくなった。



そして今日。
俺は昼休みが終わりかけの時間帯に屋上の空気を吸おうと、学校にやってきた。



屋上に向かう途中、矢野星司に肩を叩かれて。



「今日の放課後4時。下駄箱に来てもらえる?」



「は?」



「じゃ、よろしくね。来なかったら、美憂ちゃんがどうなっても知らないよ?」



それだけ言うと、去っていった。