「由乃は人の痛みがよく分かるから。」
…いまいちピンと来なかった。
私、分かってるつもりなんてないのに。
「健流?
私、分かってるつもりないよ?
そんな優しい人間じゃない。」
「少なくとも俺はそうは思わないけどな。
でも将来は自分で決めるものだから、
結局最後は由乃が決めるんだけど。」
健流がそう言うと、タイミングよくコーヒーとココアが運ばれた。
運ばれて来た途端に、健流は何も加えずブラックのまま飲む。
(…苦いだけじゃん。)
「由乃も飲んだら?」
さっきまでの真剣な表情とは打って変わって、いつもの健流に戻っていた。
「あ、うん。ありがと…」
と返事したものの、一向に飲む気にはなれなかった。
(健流がここまでしてくれてるのに…)
(私、なにやってんだろ…)