顔をあげると、フェンス越しにサッカーの練習着を着た男の人が優しい笑顔を私に向けていた。


太陽光で少し明るめに見える茶色い髪は短髪だけどサラサラで、鼻筋が通ったキレイな顔立ちをしている。

特に黒目が大きいくっきり二重な目が印象的だった。




「ははっ。そんなにびっくりした?
あ、そっち行くからちょっと待って。」

と言うと、近くの出入り口から出て来て私の所まで来てくれた。

「立てる?」

「ち、力が入らなくて…」

「なら俺の手掴んで。いくよ、せーのっ」

私の手首を掴んだと同時に、掛け声をかけてくれて引っ張り上げて立ち上がらせてくれた。

「痛くなかったか?」

「はい。ありがとうございました。」

「へへ、どういたしましてっ」

笑った顔でそう言うと、私の目線までしゃがみこんで頭を撫でてくれた。

(よく笑う人だな。
しかも目尻が垂れてすごく可愛い…)






胸の奥がきゅーってなる。
何かがつっかえてる感じ。

(あれ?何この感じ。
…悪いものでも食べたかな。)







するとグラウンドの方から

「おーい、秀人(しゅうと)!早くしろよ!」

と大きな声が聞こえた。

「すぐ行くよ!」

秀人と呼ばれたその男の人が大声で返す。