由乃 side.
私は、県内でも有名な「紅葉学園付属中学校(くれはがくえんふぞくちゅうがっこう)」に入学した。
勉強か運動がずば抜けて出来る人たちや、お金持ちだけが通う中学校だ。
私は英語が人より優れていて、バスケもそこそこ出来るという理由で入学することが出来た。
その中学校のフェンスを挟んだ隣には、「紅葉学園高等学校 通称:紅学(くれがく)」が建っている。
他の中学校から入学して来る人もいれば、私の中学校からエスカレーター式で入学する人もいる。
ある日の部活の帰り道。
その日は1人で歩いていて、紅学のグランドの脇道を通っている時だった。
ふとグラウンドの方に目を向けると、サッカー部が練習していた。
中学の部活とはまた違う雰囲気で、身体つきや技術が大違いだった。
バスケ部の自分からしたら、足であんなにボールを器用に操れるのが不思議でしょうがない。
気付くと、足を止めフェンス越しに練習に見入っていた。
その時だった。
フェンス越しだったけど、ボールが目の前に勢いよく飛んできた。
私は驚いてその場に尻もちをついてしまった。
「俺、取ってくるわー」
部員の1人がボールを取りにこっちに走ってくる。
(うそっ!
こんな恥ずかしい格好見せられないよ!)
と思いつつも、びっくりして腰を抜かしてしまったのか自力で立てなかった。
そしていつの間にか、部員がボールを取りに来て、私に気が付いた。
(見られちゃったよ…)
内心パニックになりながら、恥ずかしさのあまり顔を上げることが出来なかった。
(早く、練習に戻ってくれないかな…)
そう心の中で思っていると、頭の上から声がした。
「ケガない?大丈夫?」
私はびっくりして、ふと声のする方を見た。