「おい、修になに言うんや!」

男子生徒がそう言えば周りが便乗して調子に乗り出す。

「一人じゃなにもできない奴等が入ってこないで!今、私はこいつと話してるの!」

財前を睨み付けたまま友里亜が言う。
友里亜はクラス中の痛い視線を感じる。

「……マジできれるって……なんか」

「調子のるなやぶりっ子!」

財前が心配そうに言いかける言葉を遮ったのはクラスの女子の発言。
ぶりっ子と言われればその言葉に反応してびくっと肩をあげて怯える。過去に受けた嫌がらせを思い出す。

鞄を肩にかけて荒々しく教室を出る。

「おいっ、三次!」

財前が出ていった友里亜に声をかけるが周りはくすくすと笑い出す。

「言い返すことがなくなったら逃げるとか子ども~」

「ほんとほんとっ」

一人が言い出せば他のクラスメイトも言う。
そして、クラスは嫌な爆笑の渦に包み込まれる。

そんな中、苛立ちを隠そうとしない表情をする忍足。

「っ、お前らふざけんな!」

近くにあった机を蹴飛ばす財前。
その態度に周りの生徒らが驚いて一気に教室が静まる。

「なんやねん!ふざけんなや、あいつに俺クラスのやつら良い奴ばっかやゆーたのに、ほんなんしてたらなんも言えんし前言撤回せなあかんやろ!」

財前が生徒に怒鳴り散らし、慌てて教室を出る。
しかし、廊下にはもう友里亜の姿はない。

「……お前ら、ふざけんなや」

静かに忍足も怒りを表す。
そして、忍足は席に座る。

財前は色々な場所をめぐるが、どこにもいない。

ただひとつ、探していないところといえば休み時間には空いていない“屋上”だけである。