「初めまして、忍足の同僚の石田です。……実は、忍足が……」

次の瞬間、愛の頭の中が真っ白になった。

“忍足が……仕事場から帰るバスに乗っている途中で……交通事故に巻き込まれて……そのまま……亡くなったんです……”

石田が着ているスーツを掴みながら唇を噛み締めて震えている。

もう、帰ってこない。
それを思うと愛は唇を噛み締めて口の中に血の味がする。
頭の中が真っ白になっていて、泣きたくても泣けずにただその状況をどうにか理解しようとする。

「いやぁあああああっ!」

髪をくしゃくしゃと掻き乱してその場に座り込む。
少ししかいない空港にいる人が愛の方を見る。
泣き崩れ、口元を押さえて息が出来なくて苦しそうに喉をかく。

「やだっ、やだあっ!」

唯一、幽霊を見えることを知っていていつも支えてくれてそばにいてくれるそんな人。

今日だって不安だったけど妊娠していることだって伝えようとしていたのに、そんなこともできない。

嫌だ、嫌だ!

愛は頭の中でそんなことばかり考えていた。

そばにいてくれる人は……もういない。

「あのっ……これ、忍足から預かったんです!」

「え……?」

泣き崩れる愛の肩を掴みじっと愛の顔を見て、今は少なくとも自分が支えなければと石田は思った。

「これ……忍足の遺品で……。忍足、俺と帰る途中でこれを買っていたんです。すごく、嬉しそうでした。日本に戻ったらすぐにでも婚約するって……っ」

石田もついに涙を流し始めた。
石田が愛に渡したのは高級な指輪ケースとネックレスケース。

「っ……自慢の彼女で……奥さんになるんや、羨ましいやろって……いつも、忍足は言っていました」

涙を拭いながら石田が愛に説明する。