四月になり、着なれない初めてのスーツに緊張感を纏いながら大学の入学式を終える。

愛は隣に座っていた同じ学科の女子生徒と早速友達になり、連絡先の交換も済ませた。

その子の名前は、甘楽 満里奈(カンラ マリナ)。
名前はすごくふわふわとした可愛らしい女の子っぽいものだけれど、本人はボーイッシュでさばさばしている。

大学生活を送っている間愛は彼女とよく過ごしていた。

「愛ー、だりぃ」

夏休みになっても、短期学生にとっては関係ない。
四年制の大学と違い、二年生でもう就活の準備をする。そのため、他の学生らが遊んでいても関係なしに学校へ来ている。

満里奈の口癖はだるい。
常にやる気のない声で愛に訴えて、肩に顎をのせる。

「なにがよー、まだ授業始まってないよ?」

愛が苦笑いをしながら満里奈に答える。

「学校自体だるぅ……あ、今日さカラオケ行こうや!学校帰りに!」

「あー……今日用事あるんだよね……」

そう、今日は最後に良介と離れてから約束の日になった夏休み。

普段、真面目に就活をしている愛もこの日ばかりは良介のことがずっと気になっていて左手の薬指にはめている指輪を空に向けてにやにやと表情を緩める。

同時に、満里奈の鋭い反応で愛の頭はひっぱたかれる。

「リア充すなやー」

満里奈が不満そうな顔をしながら愛に言う。

しかし、この日ばかりは許してほしいと思う愛。

「あ、じゃあ空港行くね!」

満里奈の話をスルー気味にして空港への足取りを早める愛。

「なんやねん、もー」

愛が言葉だけごめんと言い走り出せば不満そうにしてポケットに手を突っ込み小石を蹴りながら歩く。

「恋とか、つんまんねー」

愛が幸せなのは満里奈も友達として嬉しいことだが、満里奈にとっては『恋』は、どうでもいいものであった。