「消えちゃったねー。そろそろ行こうか。一緒に帰る?」

「……うん」


頷いたのを聞いて、私が先に一歩を踏み出した……

その直後。


「──奈央」

「んー?」


呼ばれて、振り返れば。


「寂しがる必要なんてないよ」


真面目な顔をして私を見つめる、郁人がいた。


「俺は変わらないから。ずっと、変わってない」


真剣味のある声で言われて。


「それは、なに?」


知りたくて聞くと。


「……まだ、秘密」


ちょっと困ったように視線を泳がせた。




「ええーっ? 気になるじゃんっ」


抗議する私を見て、郁人は小さく笑った。

最近では滅多に見れない郁人の笑みに、私の心が暖かくなる。

まるで、今日の気候のよう。

郁人の表情が和らぎ、私を見る瞳もどこか穏やかで。

彼の唇がまた動き出す。


「じゃあ、そのまま気にしてればいいよ。そんで、待ってて」


春風が吹く。


「いつか必ず言うからさ」


桜の花びらを乗せて。


「だから……」


春の香りを運んできた刹那。












──できれば、誰のものにもならずにいて。












聞こえてきた幼なじみの漏らした秘密に


私は瞳を瞬かせた。











- fin -





このお話は、以前、お友達の部誌にゲスト参加させていただくことになり執筆したものです。

テーマは幼なじみ以上、恋人未満。
両思いになる手前のくすぐったい時期を書きたくてニヤニヤしながら書いてました。

ちなみに、郁人みたいな男の子を初めて書いたのですが、分類はツンデレでOKなんでしょうか?
よくわかんないけど、個人的に可愛らしくて好きな男の子キャラとなりました。うふふ。


ではでは、ここまでお読みいただきありがとうございました★




2014.12.28 和泉あや

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