「きれー……」
吸い寄せられるようにその扉に近付いた。
鮮やかなグリーンの丸みを帯びたおにぎりみたいな三角を4つ組み合わせて作られたモチーフ。
そのモチーフが全部で7つ、帯状のスペースにバランスよく配置されて、その回りを色とりどりのガラスの欠片たちが埋め尽くす。
朱、青、アイボリー、薄紫……。
淡い色調の小さなガラスたちに囲まれたグリーンのモチーフはとても可愛らしくて、その存在は際立って見えた。
「これって、四つ葉のクローバーだよね?」
すぐ横に寄り添うように立っているシンタくんを見上げる。
「そうだよ。
かっきーがね、この店のシンボルモチーフはクローバーにしようって。
店の中でも一番目立つのはクローバーの時計だからってさ。
幸福の象徴だし、店のコンセプトにもハマるし……いいでしょ?」
シンタくんの言葉に何度も頷く。
こんな素敵なステンドグラスをデザインするなんて、柿本さんってすごい……。
「今までのドアも気に入ってたんだけど、入りづらい雰囲気だったから思い切って変えてみました。
これからは集客に力を入れたいからさ。
さ、中にどーぞ。
内装は殆ど変えてないけど、もうひとつかっきー画伯の作品があるから」
シンタくんが新しいドアを開けて、私を店内へ誘う。
『集客に力を入れたいからさ』
その言葉にちょっと引っかかったけど、私はシンタくんに背中を押されていつもより明るい照明で照らされた店内へ足を踏み入れた。