「千波。上がってきていいよ。足元気を付けてな」
何だろう?この感じ。
私は首を捻りながら言われた通りトントンと階段を上っていった。
「……え? わ、わ、わ、……」
後1段で上がりきるというところで私の目に大きくて鮮やかな色彩の塊が飛び込んできて、私は呆然とそこに立ち止まってしまった。
以前のこのお店の入り口は、重厚感のある木製のドアで小さな覗き窓すらついていなかった。
踊り場に電気がついていても、店内からの明かりは一切ないのでちょっと薄暗くて入るのに躊躇しそうな雰囲気だった。
兄が書いた店の看板も物々しくて、ここが何の店なのかすぐには分かりかねる。
『それでも興味をもってこのドアを開けてくれたお客様にだけ最高のサービスを提供するの』
シンタくんはイタズラっぽく言って笑ってたっけ。
今、私の目の前にあるドアは以前のそれとは対照的だ。
既存のドアを加工したのだろうけれど、真ん中部分が太い帯状に切り取られている。
そしてそこには明るい彩りのステンドグラスが嵌め込まれていた。
踊り場の灯りと店内から溢れ出る光とでキラキラと輝くステンドグラスはとても眩しくて、どんな人でも引き付けられてそのドアに手をかけてしまいそうだ。
「カッコいいでしょ?
デザイン by かっきー 、だよ」
シンタくんが得意気にニッコリ笑った。