シンタくんに連れられてたどり着いたのは、慣れ親しんだいつもの場所。



【bar 三男坊の家】



着いた時ほんの少し違和感を覚えた。



その答えはシンタくんの言葉ですぐに解決する。



「千波はちょっとここで待ってて。
灯り点けてくるから。
俺が声をかけたら上がってきてくれる?」


ずっと繋いでいた手が離されて、シンタくんが真っ暗な階段を軽やかに駆け上がっていった。



そっか。ここって灯りがないとこんなに暗いんだ。



もともと路地裏の寂しい場所にある店だ。
少し先にカレー屋さんがあって、その周りだけぼんやりとオレンジ色の輪っかができているけど、辺りは街灯の蛍光色のみでどこか霞んで見えるような気がする。



ちょっと落ち着かない気持ちでキョロキョロしていたら目の前がパッと明るくなった。



私の前に拓ける世界。


オレンジ色に照らされた外階段が私の前に真っ直ぐ伸びている。


シンタくんは店内の灯りも点けたらしく、踊り場にも光が溢れていた。



……と、ここでまた違和感。



店内の灯りを点けたから踊り場が明るい?



眉を潜めたところで上からシンタくんの声が降ってくる。