そんな私とは対照的にシンタくんは全く緊張もしていない様子で淡々としている。



全ての仕草が自然でとても然り気無いし、気持ちも余裕たっぷりに見える。



さすが大人だよな……。




羨ましいというか、悔しいというか。




私と違ってこれが初めての交際でもないのだから、このくらい慣れていても当たり前なんだけど……。



ズルいというか、悔しいというか。




考えなくてもいいくだらないところにまで思考が及んでしまいそうになり小さく頭を振った。




「……何してんの?」



呆れたような声に視線を上げたら、ちょうど交差点で立ち止まったシンタくんがこれでもかってくらい優しい表情で私を見下ろしていた。



私の緊張もどうしようもない僻みも全部お見通しなんだろうな。




うーん、やっぱり。



やっぱり…………悔しい。






「……何でもない。寒いだけだよ」



だから精一杯平静を装ってそう答えたら、クスリと笑ったシンタくんは繋いでいる手をダウンのポケットに入れてくれた。



そして、暖かいポケットの中でギュッと力強く手を握り直す。



また新しいドキドキがやってきて、どうやったってシンタくんには敵うわけないと観念した私は、ふわふわの暖かい羽毛に包まれた肩にそっと自分の頭をのせた。