これ以上このままでいたら本当にのぼせそう…と危機感すら覚えた頃、電車はやっと川越に到着した。



私たち以外にも下りる人がたくさんいるので押し出されるように車外へ。



外に出た瞬間、履いていたブーツの爪先がコンクリートに躓いてしまったけど、もちろんシンタくんが私の腕を引いて助けてくれる。



「危なっかしいやつ」



ボソッと呟くシンタくんに



「仕方ないじゃん。
まだ都会の電車移動に慣れてないんだもん」



頬を膨らませたらブハッと思い切り吹き出されてしまった。



そしてまた当たり前のように私の右手をとって歩きだす。



考えてみたら、予備校で手を握られてからここまで私たちはずっと触れあったままだ。



手を繋いだり、肩を抱かれたり、こんなに長い時間男の人とくっついたままでいるなんて初めてのことで私のドキドキは止まらない。



告白の時も抱き締めてもらったし、1回だけのラーメンデートの時も手を繋いだりはしたけど、こんなにずっと繋がったままじゃなかった。



こんな時、普通の人は緊張したりしないのかな?
これくらいのことは平然と受け止められるものなのだろうか?



私には全く分からないから戸惑いっぱなしだ。



『千波はさ、チャンスならいくらでもあったのに自分で全部ふいにして恋愛経験値を全く上げてこなかったもんね。
今どきの中学生にも劣るレベルだよ?』



雪には何度もからかわれたけど仕方ない。



だって、中学生になってすぐシンタくんを好きになってずっとそのまま想い続けていたんだから。



他の誰かと経験値を上げるなんて考えられなかったんだから。