そんな中でも俺の心を弾ませてくれるのは、やっぱり千波で。



カウンターを挟んで向こう側にいても、俺を振り返って笑ってくれる度にどうしようもないくらい幸せな気持ちになる。



ただ視線を合わせるだけでも心が通じ合う前と後ではこんなにも違うのかと自分でも驚くくらいだ。



「俺のお祝いとか言っておきながら、今日一番おめでたそうなのはシンタと千波だったりして」



ナポリタンを作っている俺を眺めながらカウンターに座る近藤さんに苦笑いで返す。



「何かすみません。
千波がはしゃぎすぎなんですよね」



「いや。むしろシンタの方がテンション高いし、いつもと全然違う。
そんな顔も出来るんだな、って感動してるよ、俺」



「……そうですか?」



急に恥ずかしくなっていつもの自分を取り戻そうとするがうまくいきそうもない。



「シンタはなかなか素の自分を見せないからな。
千波がお前を変えてくれればいいんだけどな」



真面目な顔で見つめられて、俺も作業の手を止めて近藤さんと向き合う。



「シンタ、これからは千波を支えることばかりじゃなくて千波に寄りかかることも覚えろよ?

今まで十分1人で突っ張ってきたんだから…」



「……はい」



近藤さんも俺の事情全てを知る1人で、俺のことを随分気に懸けてくれていた。



「もう大丈夫です」



今までの感謝も込めて頷く俺に近藤さんも同じようにしてくれて、そのこともとても嬉しくて、
やっぱり俺はいつも通りに戻ることなんて出来なかった。