近藤さんがやって来たのは約束の時間から30分ほど過ぎてからだった。



だけどその間俺たちはワイワイ賑やかに喋っていて(殆どが清海をからかう時間だったけど)誰もその事に気付いていなかった。





「悪い。電車が遅れてて。
清海にメール入れたんだけど」



「メール……?

あ、本当だ。すみません、近藤さん。

ワケあって取り乱してました」



ポケットからケータイを取り出した清海が頭を掻く。



「は? 取り乱してたって何? 」


店に入ってきた近藤さんはキョトンとしている。



「近藤さん。説明は後でしますから。

とりあえず、始めましょうか?」



テーブル席に出来上がっていたオードブルを並べながら言った俺に歩み寄ってきた近藤さんが耳打ちする。



「あのさ、表に1人待ってもらってるんだけど」



「はい?」



一瞬、近藤さんが奥さんを連れてきたのかと思ったがすぐに頭の中で否定する。


それなら待たせたりしないで一緒に入ってくるだろうし。
第一まだ奥さんはご実家にいるはずだ。



「えっと……?」


首を傾げる俺に近藤さんも同じようにしながら



「たぶんここの常連さんだと思うけど。

表の貸し切りの貼り紙見て落ち込んでたから引き留めちゃった。

何かシンタと親しそうな人に見えたし、あまりに残念そうだったからつい…」



近藤さんの話に心当たりのある人物なんていなかったけど、俺は慌てて店のドアを開けた。