「もういいんじゃない?妹で」
雪の一言に動きを止める。
「ゆーきー」
思い切り恨みがましく睨み付けてみたけど、雪はシレッとココアを啜っている。
「恋愛よりも家族愛の方が良いってこともあるじゃない」
「…………」
マグカップを両手で包み込んで、熱いココアに息を吹きかけながら雪に言われた言葉の意味を考える。
っていうか、速攻否定しない自分に驚いてもいる。
完全に弱りきってるよ。私。
そんな私の変化を見逃さず、雪は畳みかけてくる。
「妹でいたほうがシンタくんとずっと一緒にいられるよ?
恋愛っていつか何かしらのゴールをする時がくるけどさ、それが結婚じゃない限り幸せな結末じゃないことの方が多いじゃない。
恋愛ってリスキーな部分が多いのに何でこんなに人を引き付けるのかな?
……って、私もそのリスキーな部分の魅力を知りたくて恋に恋してるんだけどさ。
でも、千波みたいに好きな人と家族みたいに繋がれるんなら私はそっちの方がいいかも。
だって、家族は終わらないもん。
そっちの方がずっと一緒にいられるもんね」
弱った私の目の前に雪が差し出したものは、
禁断の甘い果実。