「行って来ます」


玄関を開けると、開放廊下から生暖かい風が吹き上げて来た。


今日も暑くなりそうだ。


下矢印のボタンを押してエレベーターが来るのを待っていたら、バンッと勢いよくドアを開ける音がして、ドタバタとものすごい足音が近づいて来た。


「海司ー!おはよー。

ふぅーっ。なんとか間に合ったわ」


「おい、お前。髪がボサボサじゃねぇか」


「だって、ついさっき起きたんだもん」


「朝飯は?」


「そんなもの毎朝食べてないわよ」


「おまっ、そんなこと自慢気に言うことかよ!」


まったく……。


毎度の事ながら、コイツにはあきれて物が言えない。