え……?


今、誰かの声がしなかった?


私はぎゅっと閉じていた目をゆっくりと開けた。


私の指に、細長い指が優しく絡まる感触がする。


恐る恐る下に向いていた顔を上げると…。


「花音……」


にっこりとほほ笑んだ海司の顔が見えた。


うそ…。


これは、夢…?


「それ、本当のこと?」


「か、いじ?」


「俺のことが好きって…。本当?」


海司の問いに、私はコクリ頷いた。


「本当だよ。

私、海司が好き。

大好きなの。

唯にも、誰にも海司を渡したくない。

ずっとずっと、海司のそばにいたいの」


もう絶対に、離れたくないの。


これ以上自分の気持ちに、嘘なんかついたりしない。


「すげぇ、うれし…」


少し掠れた声で言って、またにっこり笑う海司。


そして、ゆっくり身体を起こした。


「花音……」


私の名を呼んだかと思ったら。


海司は、ぎゅっと私を抱きしめた。


「俺も…、好きだよ…。

絶対に離さない……」


「うん…。うん……っ!

ありがとう、目を覚ましてくれて。

ありがと……っ、海司」


夕日が差し込む病室で。


海司が目を覚ました喜びを噛みしめながら。


私達はしばらく抱きしめ合っていた。