恵介君とはバス停で別れて、私はその足で病院へ向かった。


海司に会いたくて、もう居ても立ってもいられなかったからだ。


コンコンとドアをノックして、病室へと入る。


すると、おじさんもおばさんも美空さんもいなくて。


海司が一人、ベッドで眠っていた。


私は、ベッドの横にあった椅子に腰を下ろした。


海司は相変わらず目を閉じていて。


目を覚ます気配はなかった。


「海司……」


私は海司の左手を、両手でそっと包み込んだ。


「あったかい…」


海司、こんなにあったかいのに。


ちゃんと息だってしているのに。


どうして眠ったままなの?


もう目を覚まさないだなんて、信じられない。


「ねぇ、海司。

このままずっと目を覚まさないつもりなの?

身体は生きているのに、心をどこに置いてきちゃったの?

お願いだから、ここに戻って来てよ。

お願いだから、目を開けて!

私…、海司に伝えたいことが、山のようにあるの」


やっと。


やっとわかったんだもの。


自分の本当の気持ちに。