「花音ちゃん…」


恵介君に呼ばれて、ハッと我に返った。


「やっとわかった?」


「恵介君……」


もうここまで来たら、素直に認めるしかないみたいだ。


私は、こくりと頷いた。


その途端、なぜか泣きそうになった。




これまでのことを、冷静に思い返してみると。


私と海司は身体が元に戻った頃から、お互いを異性として意識し始めていたような気がする。


私達は入れ替わった時に、相手の裸を全て見てしまったわけで。


元に戻った海司を見てドキドキするのは、きっとそのせいだって思って考えないようにしてたんだ。




海司の家の玄関で、海司に突然キスをされた時。


すごくビックリした。


海司とそんなことになることが、信じられなくて。


だけど、嫌じゃなかった。


むしろ身体は正直で。


全身が熱く燃え上がって、海司のキスをもっと欲しがってた。


それなのに、私はそれを感じなかったことにして。


知らないフリをしたの。


でも本当はね。


海司が私以外の女の子と、一緒にいるところなんて見たくないし。


私以外の女の子に話しかけたり、優しくなんかして欲しくなかった。


海司の言った通りだよ。


唯と海司が付き合うだなんて、そんなの想像しただけで絶対に嫌だったの……!


「ごめんね…、恵介君……」


恵介君をこんなふうに傷つけたくなかったのに。


私が早く認めなかったから、恵介君につらい思いばかりさせてしまった。