「俺はさ、今回のことがなくても、もうとっくに気づいてたよ。

海司が花音ちゃんに好きだって告白した時。

花音ちゃんの心がすごく揺れ動いていたから…」


「私が…揺れた?」


そんな…っ。


確かに、すごくビックリしたけど。


だからって、揺れたりなんかしていないはず。


だって私は恵介君にずっと憧れていて。


その彼と付き合えているんだもの。


揺れるはずないよ。


「私…、揺れてないと思うんだけど……」


言いながら、声が震えた。


どうして?


なんで私、動揺してる?


「結構鈍いんだね。

純粋と言えばそうかもしれないけど、ここまで鈍いとさすがの俺も少しイライラするよ」


恵介君は、深く長いため息をついた。


「仕方がないから、教えてあげる。

多分、そうすることが。

俺が今海司にしてあげられる、たった一つのことだと思うから……」


さっきから別人みたいな恵介君。


一体、何を言おうとしているの?


「花音ちゃん。

海司のことが、好きだよね?

家族みたいな関係で好きとか、そんな意味じゃないよ。

恋愛感情で、好きでしょう?」


恋愛感情?


私が海司に?


「そんな。ちが…っ」


違うよって言いたかったのに、その続きが言えなかった。


なぜか、言葉にならなかった。