「帰ろうか」


「うん…」


部活も終わり、着替えを済ませた私と恵介君は、いつものように二人で校門をくぐった。


「もうすぐ2年生が終わるね」


一緒に帰っているのにあまりにずっと沈黙だから、私から恵介君に声をかけた。


話せなかった5日分を取り戻すには、私の方から歩み寄るのが当然なわけで。


「なんだか、この一年はあっと言う間だったなあ」


6月に海司と事故に遭って、2ヶ月も眠っていた私。


目が覚めたら覚めたで、海司の姿になっていて。


何が何だかわからないけど、毎日をとにかく一生懸命に過ごすしかなかった。


元の姿に戻ってからは、慣れないマネージャーの仕事をしたり。


思いがけず、恵介君と付き合うことになったり。


そんな感じだったから、毎日があっと言う間に過ぎて行った。


今まで生きて来た中で、一番濃い日々だったかもしれない。


「ねぇ、花音ちゃん…」


「ん?」


恵介君の声に振り返ると、恵介君はせつない顔で私を見つめていて。


その顔に、ドキッと心臓が跳ねた。





「俺達、もう……。







別れよう」