「花音!あんた、いつまでそうやって寝ているつもりなの?」


仕事から帰ったお母さんが、帰るなりバタンと勢いよく扉を開けて、私の部屋に入って来て言った。


「5日も学校をズル休みするなんて!」


相変わらず声の大きいお母さんが、私のベッドにバフッと腰を下ろした。


「……ズル休みじゃないもん。本当に体がしんどいんだもん」


「熱もないし、風邪の症状もない。別に顔色も悪くないじゃないの」


「でも食欲はないし、体重は減ったよ」


最近少し体重が増えていたけど、ここ数日ですっかり元に戻った。


「花音の気持ちはわかるわよ。お母さんだって、すごくつらいんだから」


わかるなら、そっとしておいてほしい。


今は、何も考えたくないんだもの。


ただこうして、ひたすら眠っていたいんだ…。


その時、私のスマートフォンが鳴った。


「花音、電話よ。

佐野って人からみたいだけど、出ないの?」


「ん。後でこっちから電話する……」


そう言って寝返りを打った。


「なんか、あんたらしくないわね…」


いつまでも鳴り止まないスマートフォン。


それでも私は、電話に出る気にはなれなかった。