「恵介君に不安な思いをさせてごめんね。

確かに私、必死になり過ぎてるよね。

でも海司への気持ちは、家族に対する思いに似てるの。

私達はお隣さんで、家族同士も仲が良くて、親戚みたいな関係なの。

海司が目を覚まさないから、海司のお母さんがすごくつらそうなの。

そんなおばさんをほうっておけないだけなの。

だから、何も心配はいらないよ」


おばさんはまだ完全に心の病気が治ったわけじゃないのに、また心労が重なって病気が悪化したら大変だもの。


だから私は、少しでもおばさんの力になりたい。


「ごめ、ん。

変なこと言って、ごめんね。

でも、なんか不安だったんだ」


恵介君が、ちょっと泣きそうな顔で言った。


「大丈夫。

恵介君が心配するようなことは何もないよ」


「うん。信じてる」


恵介君がやっと笑ってくれたから。


その笑顔にホッとして私も笑った。


笑ったけど。


私の頬の筋肉が少しこわばっていたことに。


恵介君は気づいただろうか……。