そう言うと海司は、私の唇からそっと指を離した。


唇がやっと解放されて、私ははぁと長い息を吐いた。


でも、心臓のバクバクは治まりそうにない。


「冬至の日のこと、覚えてる?」


冬至の日って。


私達が元に戻った日のこと?


「あの時、俺もお前もすげー頭が痛かっただろう?

あまりに痛くて、俺…きっとこのまま死ぬんだろうなって感じてたよ。

その時に思ったんだ。

もし生まれ変われるなら、いつもみたいな仏頂面じゃなくて笑顔でいて。

自分のことばっかり考えるんじゃなく、周りの人の気持ちも理解して。

俺の出来ることで、誰かの役に立ちたいって…」


うそ…。


海司はあの時、そんなことを思っていたの?


「実際は死んだりしなくて、元の身体に戻ったわけだけど。

でも俺は、もう一度命をもらったような気になってたんだ。

命をもらったんだから、きっと俺にはしなくちゃいけないことがある。

それはこれまでの自分勝手な行動を改めて、他人を思いやるようになることだって信じて疑わなかった。

だから、お前と恵介が付き合うことを応援しようって思ったんだ…」


「海司…」