海司、やめてよ。


なんでそんなこと言うの?


そんなこと出来るわけないじゃない。


「本気なんだ?」


恵介君が海司の耳元で言った。


「あぁ……」


海司は、真顔で頷いた。


ふたりのやり取りを見ながら、私はどうしていいかわからずに。


ただ、じっと立ち尽くしていた。


「わかった。

その勝負、受けるよ」


「け、恵介君?」


恵介君まで、何を言ってるの?


「そうこなくちゃ」


海司は、ニヤリと笑った。


勝負って何?


一体、何をしようとしてるの?


「正々堂々と、な。

スポーツマンらしく」


「どうだろ。俺は運動部の経験がないから、目的のためなら反則プレーしまくるかも?」


海司の言葉に、軽く下唇を噛む恵介君。


「まぁ、そういうことだ」


そう言うと海司はヒラヒラと手を振って、ジョギングをしにグランドへと走って行ってしまった。


取り残された私と恵介君は、どうしていいかわからずに。


しばらく何も話せなかった。